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病草紙3(京都国立博物館本3)



(歯槽膿漏の男)

これは歯槽膿漏のために、歯がぐらぐらになってしまった男を描いている。歯がぐらついているために、折角用意された食事を食べることができないでいる。御椀に飯がてんこ盛りに盛られ、それに箸が立てられている。また、おかずの方は一汁三菜に香の物といった具合に、この時代としては結構豊かな内容だ。食文化の資料としても価値があるといえよう。


(風病の男)

風病というのは、中風つまり脳卒中のことである。この男はどうやら、脳卒中のためにろれつが回らなくなったのだろう。碁の相手に向って何やら言っているが、それが言葉にならないので、聞いている女たちが思わず笑ってしまう、そんな光景を彷彿とさせる場面だ。

なお、ここで遊ばれている碁は、取った石が添えられていることから囲碁だとは思われるが、それにしては、碁石の並び方がでたらめだ。この絵を描いた者は、囲碁のルールがよくわかっていなかったのだろう。


(口臭の女)

口臭というものは、色々な原因で生じるものであり、普通病気だとは認識されていない。それを病草紙の中に入れたのには、どのような事情があったのか。

口臭を漂わせているのは右の赤い衣装の女なのだろう。自分でも照れくさそうな表情をしている。その女に向かって、一人の女が指を突きだし、もう一人の女が袖で鼻をふさいでいる。余程強烈な匂いを立てたものと思える。







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