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駒競行幸絵巻その二(久保惣美術館本1)



(駒競行幸絵巻:東宮到着の場面1)

駒競行幸絵巻の久保惣美術館本は二幅の絵を収めている。ひとつは、東宮が高陽院に到着した場面を描いたもの、もうひとつは後一条天皇の出御の様子を描いたものである。

東宮到着の場面は、中央に門を描き、その右手に東宮の乗っていた牛車を、左手に牛車から降りて寝殿に向かって歩いていく東宮と、それを警護する者らの姿を描いている。

上の絵は、画面の右手部分。飾り立てられた牛車を10人の官人が守護している。これは唐車といって、唐風の豪奢な飾りを施した王者の乗物である。車の後ろには、屋形の部分と同じ模様の布が着けられている。

牛車が門の方に尻を向けているのは、ここから降車するためである。降車の便宜のために、牛が車から放たれ、褐衣を着た二人の牛飼いに綱を引かれている。牛車の周りには、様々な人が集まって来て、東宮到着の様子を見物している。


(駒競行幸絵巻:東宮到着の場面2)

これは画面の中央部分。東宮の一行がいましも門をくぐるところである。下の方に描かれている二台の牛車は檳榔毛の車で、これも身分の高い人の乗物である。


(駒競行幸絵巻:東宮到着の場面3)

画面左部分は、門をくぐって寝殿に向かう東宮一行が描かれる。列の先頭を行く黄丹(オレンジ色)の束帯姿が東宮である。道筋には緑色の蓆が敷かれているが、その上を歩くことができるのは、東宮と東宮の裾を持つ公家だけである。

門内にはどういうわけか見物人が紛れ込んでいる。彼らに向かって随身の一人が弓を振りかざして追い立てようとしている。その剣幕に、子どもを抱いた女が恐れおののいている様子がわかる。

この絵は、車馬人物の様子が微細に描かれ、当時の風俗を知る上で貴重な資料ともなっている。

なお、画面左手は霞のようなものを介して次の場面につながっている。霞のようなものを介入させたのは、邸の広大さを示すためだと解釈されている。







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