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駒競行幸絵巻その三(久保惣美術館本2)



(駒競行幸絵巻:後一条天皇出御の場面1)

駒競行幸絵巻久保惣美術館本で、東宮到着の場面の霞を介した先に描かれているのは、後一条天皇出御の場面である。高陽殿の神殿の南面に面して後一条天皇が坐し、寝殿南の池には龍頭の楽船が二艘浮かんでいる。画面全体が華やかな雰囲気に包まれ、競馬を迎える祝祭的な気分が伝わってくる。

上の絵は、画面の右手部分。霞の中から突然御殿が出現したといったサプライズ感を感じさせる。寝殿の床の上には公家たちが並び坐し、その足元には近衛の武官たちが控えている。楽船には数人の男女が乗り込み、船を動かしながら楽器を演奏している。


(駒競行幸絵巻:後一条天皇出御の場面2)

画面中央は、神殿に出御した天皇と東宮が描かれる。天皇は、座敷奥の大床子の上に坐しているが、その姿は描かれていない。東宮の方は、平座に錦の褥を敷いた上に、黄丹の束帯を着て坐している。その手前には公家たちが並んでいるが、そのうちの何人かは池の方が気になると見えて、背後を振り返り見ている。池には橋が架けられ、その先の中の島には、臨時の楽屋が設けられている。

池に浮かんでいる鮮やかな色のモミジが、季節感を感じさせる。この競馬の催しは、旧暦九月下旬、秋の盛りの頃に行われた。


(駒競行幸絵巻:後一条天皇出御の場面3)

寝殿とは渡り廊下を隔てて西の対がある。その西の対の先端は池の中に突き出て、釣り殿となっている、その釣り殿の中には、赤く飾られた舞台が作られているが、これも舞楽の演奏に用いられた。詞書には、「蘇芳韮、駒形、其駒などさまざま舞ひ出で」とあるから、競馬に関わりのある曲が演奏されたようである。







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