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一遍聖絵:鎌倉時代の絵巻物



(一遍聖絵、第二巻、縦37.7cm、歓喜光寺蔵)

京都の歓喜光寺に伝わる「一遍聖絵」は、時宗の開祖一遍の修行と布教を記録した伝記絵巻である。一遍の異母弟聖戒が詞書を作り、高弟の法眼円伊が絵を描き、一遍の死後十年目の正安元年(1299)に完成した。全十二巻からなり、絹布に人物や風景の様子がきめ細かく描きこまれている。当時の風俗を知るうえで貴重な史料であるとともに、日本の風景画のひとつの源流を示している。

上の絵は、第二巻から。伊予の桜井で一遍が聖戒と別れ、三人の尼僧を連れて旅立っていくところを描いている。笈を背負っているのが一遍、その前を歩くのが三人の尼僧、一遍の背後で一行を振り返り見ているのが聖戒である(これには異説がある、瀬戸内寂聴は「花に問え」の中で、先頭の背の高い人物を一遍、笈を負った人物を尼僧の念仏房といっている)。


(一遍聖絵、第四巻、福岡の市)

これは、吉備の国福岡の市の光景。自分の留守中に妻子が一遍の信徒になったことを怒った武士が、福岡の市で布教中の一遍を捕え、切りつけようとするところ。だが一遍はすこしも驚かず、逆に武士を説得して入信させる。この絵は、歴史教科書などにも紹介されたことがある。


(一遍聖絵、第五巻、雨宿り)

これは、一遍一行の僧尼たちが、下野の国小野寺に詣でた折ににわか雨にあい、板屋に雨宿りする様子を描いている。一遍は生涯旅をしながら布教を続け、常に大勢の信徒たちを従えていたので、このように、信徒たちと共にいる姿が描かれているものが殆どを占める。







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