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大日如来像:運慶と鎌倉彫刻




運慶は年少時から父の康慶に師事して奈良仏師としての修行を積み、二十代の半ばには一人前の仏師になっていたと思われる。その成果を物語るのが、円成寺の大日如来像である。台座の蓮華板裏面に書かれた銘文には、大仏師康慶実弟子運慶が安元元年(1175)に作り始め、翌年十一月に完成したと記されている。実弟子とは、実の子でありかつ弟子であるという意味である。

安元という年代は、藤原文化の余韻が残っていた。この像にも、藤原彫刻の特徴である穏やかさのようなものが感じられる。運慶はそうした要素を父の康慶から受けついだのだと思われる。彼が鎌倉彫刻特有の荒々しさを身につけるのは、東国に修行に出向いて以降のことである。

檜材の寄木造りで、頭から体幹にかけて左右二材で継ぎ合わせ、内部を刳り面(空洞)にしている。上膊部と手首の部分も矧木をして調子を整えている。目には玉眼が施されている。

藤原彫刻のような穏やかさが全体としての特徴だが、肉身の張りや腰のひねりなどに、運慶らしい新しさが指摘される。

(木像寄木造り漆塗り 像高98.2cm 安元二年 円成寺)







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