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雪舟の山水図




この山水図には、朝鮮人李孫及び朴衡文の賛がある。この二人は、文明十一年(1479)の朝鮮通信史の一員として来日したので、その折に賛を寄せたのだと思われる。この頃雪舟は、周防の大内氏に身を寄せていたが、朝鮮通信史の一向も、京の兵乱を避けて周防に寄り、その際に雪舟のこの絵を見て、賛を寄せたのだろう。

構図と言い、筆致と言い、室町時代の日本の主流派の画法に沿った描き方をしている。雪舟は、この当時はすでに、秋冬山水図などを通じて自分なりの新しい境地を開いていたが、それを披露するのではなく、伝統的な画法に従ってこの山水図を描いた。そこには朝鮮からの特使を日本流にもてなそうとする考慮が働いたのだと思われる。

賛の冒頭の句には「青山畳々水重々」とあるとおり、構図は中央に青山を配し、その周囲に水の流れを配して、山水の眺めを悠然と表現している。ただ雪舟の同時代の作品のような奥行き感は伝わってこない。



これは、下の図柄の部分を拡大したもの。中央の主山の背後には、いくつもの峰の重なる様子が薄い墨であらわされ、前景には水の流れが岩を取り囲むように表現されている。この前景と背景の山とがあまりに近接して描かれているために、両者を結ぶ道は視線を奥へと導く躍動感が認められない。(紙本淡彩 88・5×36.9cm 神戸香雪美術館)







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