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蕪図:雪村の世界




蕪を描いたこの絵は、「叭叭鳥」同様、鎌倉円覚寺の四印道人こと景初周隋の着賛がある。鎌倉滞在時の作品であろう。地中から掘り出したばかりの一本の蕪を、飾らない単純な構図で描いている。形が大根のようにも見えるが、れっきとした蕪であることは、賛の文面からも推し量られる。

賛の文面は、「園中不可勤裁編籍伝名蕪菁来一雨易肥諸葛菜根茎枝葉用多哉鹿峯平等国之四印翁賛之封之名詩人文人之所褒非常云」とある。蕪は食えないところがない、非常に役に立つ野菜だと書いてある。文中に諸葛菜とあるのは、かの諸葛孔明が、戦時の食用にしたことにちなんでいる。

墨の濃淡を活用して、全体としてダイナミックな風格に仕上げている。そのため、素材である蕪のみずみずしさが、それこそ迫真的に伝わって来る。これなら鼠も騙されそうである。

(掛幅 紙本墨画 29.4×44.3㎝ 禅文化研究所)





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