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呂洞賓図:雪村の世界




呂洞賓は、中国八仙人の一人。中唐時代の実在の人物だといわれる。古くから仙人として尊崇され、元の武宗から神仙の称号を贈られた。純陽子とも称するが、それは周易の乾卦にもとづく。乾卦はすべて陽の爻からなる。それで純陽子というわけである。

道教では、「回道人」とか「呂祖」とか呼ばれている。「有求必応」といわれ、願い事をすれば必ずかなえてくれると信じられていた。禅宗でも祖師の一人にされている。黄龍山の晦機禅師に参禅したからである。

その呂洞賓の図を、雪村は二点描いている。いづれも、元時代の「白描羅漢図」をもとにした。これは仙人が水瓶から龍の子を出すのをモチーフにしたものだが、それは本来仏教の羅漢が行う術だとされていた。

上の図は、そのうちの一点。龍に乗った呂洞賓が、左手に水瓶、右手にその蓋を持ち、上空に顔を向けてなにかを凝視している。その視線の先には、水瓶から出て来たばかりの龍の子が浮かんでいる。この図の中の龍の子を、晦機禅師と見立てて、二人が激しい禅問答をしているのだと解釈する見方もあるが、考えすぎであろう。(掛幅 紙本墨画 118.3×59.5㎝ 大和文華館 重文)



これはもう一点。呂洞賓が龍に乗って、上空を凝視しているところは、上の図柄と同じ。ただ水瓶を持つ手が、左右異なっている。また、上空に浮かんだ龍の子は、こちらのほうが明確に描かれている。(掛幅 紙本墨画 125.0×54.0㎝)





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