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松に鴉・柳に白鷺図屏風:長谷川等伯




等伯は、禽獣に仮託して家族の情愛のようなものを描くことを好んだが、この「松に鴉・柳に白鷺図屏風」は、その代表的なもの。右隻に鴉の親子を、左隻に白鷺の夫婦の、それぞれ家族愛のようなものを表現している。

これは右隻。やや右手にかかった部分に巨大な松の木を配し、その枝先の巣の中に、母鳥と三羽の雛を描き、さらにその先に父鳥を描いている。それぞれの視点が一点で結び合わさっているように見えるこの構図からは、鴉のきめ細かな情愛が伝わってくるようである。



これは左隻。左端に柳の木を配し、その枝に一羽の白鷺がたたずんでいる。そこへ、配偶と思われる白鷺は飛来してくる。二羽はいずれ一緒になって、愛を交わすにちがいない。

左右両隻を同時に見渡すと、構図が左右で対照になっておらず、やや不安定な印象を与える。これは意識的にそうしたのだと思う。そうすることで、独特の躍動感を醸し出そうとしたのではないか。(紙本墨画淡彩 六曲一双 各151.8×369.4cm 出光美術館) 





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