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楼閣山水図:海北友松




「楼閣山水図」は、六曲一双の屏風絵であるが、それぞれ細字で款記が施されており、左隻には是古寺之廊門緑樹図依御好染玄墨者也と、右隻には惟高亭之麻柳蓬舟承御望穢白楮者也と記されている。いづれも晋奉亀井武蔵守様との添え書きがある。亀井武蔵守茲矩は戦国時代末期の武将で、秀吉の覚えが目出度かったといわれる。友松には庇護者として接していたのだと思われる。

上は左隻。古寺の楼門が緑樹の陰にたたずんでいるありさまを描いている。全体として余白が多く、その分古寺のたたずまいが幽遠さを帯びている図柄である。



これは右隻。こちらは左隻に比べて図柄がやや賑やかに感じられるが、それも左隻に比較した相対的なもので、やはり全体としてのイメージは、余白の多い、閑静な図柄といったものだ。

左右を同時に対比してみると、余白を最大限に活用しながら、薄墨で輪郭を表現し、濃い墨で肝心なところを塗ることで、図柄にメリハリをつけている。友松墨画のひとつの到達点をなす作品である。

(紙本墨画 六曲一双 各115.4×357.0㎝ MOA美術館)





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