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洛中洛外図(歴博甲本)




洛中洛外図は、六曲一双の屏風図形式のものが多く、現存するものは百点以上にも及ぶが、その中で良質なものは三・四十点である。室町時代の後期、十六世紀の前半から徳川時代の初期頃にかけて盛んに制作された。その殆どは京都の町と郊外の光景を描いている。それを仔細に見ると、近世初期の京都の街並みの様子や、そこで暮らしていた人々、とくに庶民の暮らしぶりとか風俗がうかがわれるので、歴史資料としても貴重である。

上は、歴博甲本と呼ばれるもので、十六世紀の初めに作られたもの。製作者は狩野元信周辺の狩野派絵師と思われている。長らく三条家に伝わったことから三条本とも、またその後の所有者町田氏にちなんで町田本とも呼ばれる。

描かれているのは、大永五年(1525)における京都の光景。時の管領細川高国が、自己の屋敷を中心にして、京都の街並みやその郊外に広がる自然の風景を描かせたもの。洛中洛外図屏風のなかではもっとも古いもので、その後の同趣旨の図屏風に大きな影響を及ぼしたと言われる。

上の写真は、左隻。向かって右側が北にあたる。右隻は逆に、向かって左側が北にあたる。左隻のこの図柄は、右端に細川管領家の屋敷群を描き、その周囲に京都の西側の町並みを描く。



これは左隻の(右側から数えて)第二扇の上部の図柄。上部は西側にあたる。そこに室町通りが配置され、画面左手には上立売通りが斜めに横切っている。通りを歩く人々の姿から、この時代の風俗を窺い知ることができる。



これは右隻の第四扇の上部。京都の郊外が描かれている。描かれているのは、画面の上から、知恩院、南禅寺、黒谷である。

(紙本着色 六曲一双 各138.0×364.0cm 国立歴史民俗博物館 重文)





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