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月次風俗図屏風(一)





月次絵はやまと絵の伝統的なジャンルの一つだったが、室町時代の末期になると、そこに風俗を描いた月次風俗図が生まれた。本図はその代表的なもので、室町時代末期に作られたものと思われる。製作者は、土佐派系の地方絵師ではないか。もともとは十二か月分あったと推測されるが、現在は八曲一隻の図屏風として伝わっている。岩国の吉川家が伝えて来た。

上は第一扇。正月の遊びの様子が描かれている。画面上部には羽根つきや毬打、下部には松囃。松囃とは神事のひとつで、能楽が奉納される。この絵では、能楽堂の舞台で舞う人々とか、その周囲で見物する人々が描かれている。



これは第二扇。春の花見が描かれている。上部には、優雅な服装で花見をする貴婦人、下部には樹下に坐して宴を楽しむ庶民の姿。花見をしながら宴会をするというスタイルは、すでにこの時代、室町時代末期には確立していたわけだ。



これは第三扇。田植えを準備するための農作業が描かれている。上部の荷物を運んでいる人々は、田圃で働いている人たちのために、食事などを運んでいるのであろう。下部には、しろかきの作業にいそしむ人々の姿が描かれている。



これは田植えをする人々を描いた第四扇。早乙女たちが田圃に整然と並んで稲を植え付ける傍らで、田楽が披露されている。田楽はもともと田植えの神事として始まったということが、この絵からは明瞭に伝わって来る。

(紙本着色 八曲一隻 各61.1-61.8 39.9-42.2cm 東京国立博物館 重文)





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