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彦根屏風:近世初期の風俗画




彦根屏風は、彦根藩主井伊家に伝わってきたことからそのように呼ばれるようになった。作成されたのは徳川時代初期寛永年間と推測されている。表装されていない状態で、三重箱に保存されてきた。

六面あるうち、右側の二扇は屋外の、左側の四扇は屋内の光景を描いている。描かれているのは、京都六条柳町の遊里だろうといわれている。上は右半分三扇分の図柄で、右側に四人の男女が描かれている。うち二人の成熟した女性が遊女、彼女らと戯れている男性は客、右端の少女は禿である。遊女の服装には、当時の風俗が窺われる。とくに左側の遊女の髪型は、当時はやった後ろに突き出す形の髷になっている。



これは左側半分の、屋内の様子を描いた図柄。テーマは、中国風のみやびである「琴棋書画」であるが、それを遊びの精神からひねくってある。すなわち琴のかわりに三味線をひき、碁のかわりに双六をうち、書には艶文を、画には山水画といった具合である。その山水画が狩野派を思わせるので、この作品は狩野派の絵師によるのではないかと推測されもしたが、今日では否定的である。

(紙本金地着色 六曲一隻 94.0×271.0㎝ 彦根城博物館 国宝)





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