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狗子図:宗達の水墨画




宗達の水墨画の最大の特徴は、「たらしこみ」という技法を生かしていることである。たらしこみというのは、墨を塗ったあと、それが乾かないうちに墨を加えることで、墨のにじみの効果を利用した技法である。この技法を活用することで、水墨画らしい濃淡のコントラストを表現することができる。

宗達が、たらしこみを最大限活用して描くようになるのは、中期以降のことである。彼なりに新境地を開拓し、それを新たな表現手段として、水墨画の世界にも大きな転換をもたらしたのだと言える。

「狗子図」は、法橋となって以降の晩年の作だ。構図はできうる限り単純化されている。一匹の子犬が立ち止まって、地を嗅ぐような仕草をしている。その前面に、何本かの草花が薄く描かれ、子犬との間で遠近感を表している。普通は前面にあるものを濃く描くことで、遠近感を表すのだが、この絵の場合には、子犬のほうを濃く描きながら、破綻のない遠近感の演出に成功している。



これは、子犬の部分を拡大したもの。濡れた状態の墨に、墨を重ねることからうまれるたらしこみのにじみの効果がよく現われている。

(紙本墨画 90.3×45.0㎝)





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