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風神雷神図屏風:宗達の世界 |
「風神雷神図屏風」は、宗達畢生の傑作と言ってよい。落款も印章もないが、生前から宗達最高傑作と称せられ、後世にも光琳や抱一が京都建仁寺に赴いて、この図の模写を行っている。図案といい、色彩と言い、日本画の歴史上にそびえる名作である。 この図案を宗達は、三十三間堂にある風神・雷神像や、そのもとになったと思われる北野天神絵巻を参考にして描いたと思われる。風神・雷神は千手観音の眷属ということになっており、千手観音像を千体まつる三十三間堂を飾るにはふさわしい。また天神と通じるところから、北野天神と結びつくのも自然だ。宗達はそういう歴史的な伝統を踏まえながら、この図を描いたのだと思われる。 色彩的には、金地をベースにして、緑や白との対比を強調し、宗達的な世界の完成されたあり方を感じさせる。また、屏風の特性を最大限利用し、風神と雷神とが向かい合って火花を散らすといった趣を演出している。同じく二曲一双の屏風絵でも、「舞楽図屏風」が平面的な展開にとどまっているのに対して、この絵は立体的な趣を感じさせる。 それゆえこの絵は、二つを並べて鑑賞するのが、それも屏風らしく折り曲げて鑑賞するのが望ましいのだが、単独でも十分迫力を感じさせる。 これは右隻の風神図。金箔を敷き詰めたうえに、岩絵の具で彩色しているところがよくわかる。風神の肢体は緑で彩色され、金地とのあいだで強いコントラストを醸し出している。 これは左隻の雷神図。こちらは、肢体を白く浮かび上がらせ、その周囲に明度の低い色を配することで、色のコントラストを強調している。注目すべきは雲の描き方。これは墨に銀泥を混ぜて、墨だけの重い感触を和らげている。しかも宗達得意のたらしこみを活用することで、雲の動きにダイナミズムが加わっている。 距離を置いて眺めると、風神と雷神とが互いを意識するところが伝わってくる。両者の表情には、ある種のユーモアが感じられる。 (二曲一双 紙本金地着色 各154.5×169.8㎝ 京都建仁寺 国宝) |
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