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起上小法師:白隠の禅画




達磨が子供用の玩具あるいは厄除けや必勝祈念のアイテムとして今日のような形になったのは、徳川時代の中ごろだったらしい。それも起上小法師という形で子供向けの玩具として始まったようだ。白隠もそのような世の動きを察知していて、達磨の起上小法師をテーマにした絵を描いている。この作品はその代表的なもので、恐らく最晩年八十歳代の作だと推測される。

賛には「天竺では六宗の外道を挫き、我が朝では三歳の孩児を誑かす、彼では菩提達磨大師、此にあっては起き上がり小法師」とある。インドでは外道をくじくありがたい坊さんだったが、日本では達磨の人形となって子どもを喜ばせている、中国ではとうとい坊さんだったが、わが国では起き上がり小法師となって庶民に親しまれている、という意味だ。庶民の生活に溶け込んだ達磨の意義を短い言葉で表しているわけだ。

図柄は、その起き上がり小法師としての達磨を描いている。下書きの線が見えるが、それにはこだわらず自由に筆を運んでいる。朱色の部分がかなり退色しているが、この色は、支持体の状態によっては、退色が早く進む。



これは顔の部分を拡大したもの。目の位置が、下書きの部分からかなり上にずれていることがわかる。

(紙本墨画一部彩色 35.1×58.0cm 愛媛、萬松寺蔵)






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