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楊柳観音:白隠の菩薩像




白隠の描いた観音像は、慈母のイメージが強い。達磨像を初め男性的な表情における鋭い覇気のようなものに代って、観音像には女性的な優しさが顕れている。その多くは伏し目がちで、控えめな表情をしており、白隠の女性についての理想像が垣間見られる。

これは楊柳観音を描いたもの。楊柳観音は三十三観音のひとつで、病苦から救済してくれるありがたい菩薩として信仰されてきた。絵に描かれるときには、右手に柳の枝をもっている姿に描かれることが多いが、この絵の楊柳観音は、両手で丸い器を差し上げている。

蓮華の台座の上に座し、まわりには池の水が広がり、そこに蓮の葉や花が散りばめられている。この図柄からは、楊柳のイメージは伝わってこない。

賛にある「慈眼視衆生、福寿海無量」は法華経普門品の一節。「観音は慈しみの目をもって衆生を御覧になり、その功徳は海よりも深い」という意味だ。



これは観音の半身を拡大したもの。伏し目の表情にエロティックなものを感じさせる。

(紙本墨画淡彩 111.8×42.8cm 大阪新美術館蔵)







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