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渡唐天神図:白隠の文字絵




文字絵とは、文字で絵を表すもので、室町時代頃から作られていた。文字絵のテーマとしては、渡唐天神図と人麻呂図が好まれたようで、白隠もこの二つをテーマにいくつかの作品を描いている。この「渡唐天神図」はその代表的なもので、巨大な画面に勇壮な筆致で描かれた絵が、見る人に迫力を以て迫ってくる。

渡唐天神というのは、室町時代に日本で作られた伝説だ。天神すなわち菅原道真が、夢の中で中国の禅僧無準禅師のもとへ参じ、一夜にして印可を得ると、その証拠として梅の枝を持って日本に戻ってきたというものだ。日本人に人気のある天神が、禅僧の教えを乞うたとすることで、禅宗のありがたみを人々に伝えることを目的とした言い伝えらしい。

天神の顔を描き、ついで文字を使って体を表現している。文字は「南無天神大自在天神」とある。これを巧妙に書いて、絵のように見せるわけである。

賛には「唐衣おらで北野の神ぞとは袖にもちたる梅にても知れ」とある。「おらで」は「不織」と「不折」をかけている。



これは天神の上半身を拡大したもの。頭の部分には「南」、右頬の部分には「天」、顎の部分には「大」の字が見える。「南無天神大自在天神」を上から順に書いたわけではないことがわかる。

(紙本墨画 263.4×108.4cm 京都、選仏寺蔵)






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