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夜色楼台図:蕪村の世界




「夜色楼台図」は、蕪村の山水画の到達点を示すもので、彼の代表作とされ、国宝にもなっている。山水画は中国の南宋画をモデルとし、蕪村もそれを手本にして出発したわけだが、この絵にいたって、南宋画の影響を脱し、蕪村独特の境地を描き出している。

画面右端に、「夜色楼台雪萬家」とあるとおり、家々に積もった雪と、その中でほのかな灯りに彩られたいくつかの楼台を描いている。南宋画では、雪景色と言えば、白く染まった山々とその間を流れる渓流を組み合わせるのが常道だが、この絵の中の雪景色は、都会の家並みである。家並みはおそらく京の町で、背景の山々は東山の峰々かもしれぬ。

山々の描き方も、手前の町並みの描き方も、太くて大胆な線を用いて豪放な感じを与える。ところどころ白く光って見えるのは、胡粉を塗った名残だ。この絵は、まず画面いっぱいに胡粉を塗り、その上に濃淡の墨を置き、更にその上から胡粉を塗るという手法をとっている。



これは、家並みの部分を拡大したもの。楼台がうっすらと明るく見えるのは、代赭という顔料を薄くのばしたもの。それによって灯火の明りを表現している。(28.0×129.5cm 紙本墨画淡彩)







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