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林外望湖図:池大雅の世界




大雅は、宝暦五年(1755)馬歯三十三の年に出雲地方に旅している。白隠門下の円桂に招かれたというが、その折に、円桂が住職を勤める松江郊外の禅寺天倫寺の庭から宍道湖を見下ろす構図の真景図を描いた。「林外望湖図」がそれである。この作品は、大雅の画業の中でエポックメーキングな意義を持つと評価される。この作品を契機にして、それまでのやや窮屈さを感じる作風から、今日「大雅らしさ」といわれるような、のびのびとした開放的な作風へと変化していった。

構図的には、前景に天倫寺の樹木の林を配し、その林の上に覗いている宍道湖を眺望した形になっている。林の描き方には、やや量感に欠けるという指摘もあるが、背後に広がる湖の描き方には、のびのびとして、しかも明るい雰囲気が感じられる。

色彩としては、藍と代赭しか使っていないが、豊富な感じを与えるのは、藍の寒色と代赭の暖色の組み合わせが絶妙だからだろう。(133.8×57.1cm 紙本淡彩)



これは、林の部分を拡大したもの。樹木がかなり込み入っている割には乱雑さを感じさせない。明暗の表現がポイントを抑えているからだろう。







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