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瀟湘八景図屏風:池大雅の世界




瀟湘八景は徳川時代の文人画の好みのモチーフであり、池大雅も多く手がけたが、この作品は瀟湘八景のすべてを一つの画面の中に描いた珍しいものである。どの部分がどこに相当するかは、裏に貼り付けられた大雅の書簡に記されている。それによれば、向かって右より、遠浦帰帆・瀟湘夜雨・漁村夕照・洞庭秋月・平砂落雁・山市晴嵐・遠寺晩鐘・江天暮雪ということになる。

岩山や樹木の線を墨でくっきりと描き、そこに淡彩をおく一方、筆先で微細な点を施し、線描画のようなイメージを演出する。大雅らしさが集約された作品と言える。淡彩のほうは大分色あせてしまっているが、点描の部分はいまだに明瞭だ。

帰帆や人里の様子は、非常に細い線で輪郭だけが描かれている。それに比較すると手前の樹木は大きくダイナミックに描かれており、大雅独特の遠近感を感じさせる。(六曲一隻 85.0×301.0cm 紙本墨画淡彩)



これは、画面のほぼ中央部分を拡大したもの。微細な点描の積み重ね具合がよくわかる。







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