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葡萄図:若冲プライス・コレクション




若冲は、葡萄をテーマにした絵を、障壁画を含めて何点か描いている。葡萄は繁殖力が旺盛なことから、縁起がよいとされ、襖絵や掛軸には相応しいとされたようである。この絵も、そんな葡萄のおめでたいイメージを表したものだろう。

墨の濃淡だけで対象を表現している。没骨法といわれる技法だ。これに加えて若冲は、葉と葉の重なる部分や、実と実が重なる部分を白く塗り残す技法をとっている。白く塗り残さずに、手前の葉より背後の葉を暗くすることで、遠近を表現する手法も用いられている。

構図としては、画面上部の葡萄を左から右へ、下部の葡萄を右から左へと展開させることで、画面にリズムを生み出そうとする意思が伝わってくる。動植綵絵のなかの多くの絵のなかの動物や植物が、同一の方向を向いているのと比べると、興味深い対称ぶりだ。

景和と署名している。景和は若冲の字である。製作時期の記載はないが、比較的初期の作だと思われる。



これは、上部の葡萄を拡大したもの。枝が交差する部分や実と実が重なる部分を白く塗り残しているのがわかる。







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