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寒山拾得図:曽我蕭白の世界




曽我蕭白は「寒山拾得」をモチーフにした作品を幾つか手がけているが、これはもっとも古い時期の作品。絵の様式が「久米仙人図屏風」のそれとよく似ているところから、ほぼ同時期のものと推測される。二曲一双の体裁である。

寒山拾得は、中国の伝説上の人物で、日本でも人気があり、多くの画家がモチーフに取り上げた。寒山は巻物をもった姿、拾得は箒を持った姿で描かれることが多い。

上の絵は、左隻の拾得図。鬱蒼と樹木が茂る山中を、背中には多くの荷物を負い、両手で箒を持った拾得が力強く歩くさまを描く。仙人というよりは、むくつけき登山者のような印象である。背後の景色をごちゃごちゃと描くのは、初期の蕭白の特徴である。



これは、右隻の寒山図。岩穴の中に座しながら、首を横様に向けているのは、拾得がやってくる方向だろうか。拾得は樹木に囲まれ、寒山は岩穴の中にいるので、両者のそれぞれいる空間は、離れていると思われる。寒山の持ち物である巻物は、岩棚の一角に置かれている。

なお、右隻の落款には、「平安曽我次郎藤原暉雄図」とあり、左隻には、「皇園鸞山道人曽我暉雄入道蕭白画」とある。平安も皇園も京都を意味する。

(1759年頃 紙本墨画 各169.2×185.0cm 個人蔵)





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