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雲龍図:曽我蕭白の世界




「雲龍図」はもともと襖絵であったが、ボストン美術館が購入する際に襖から引き剥がされて、紙の状態で持ち帰った。そもそもどこにあったのかについては、日本画家の橋本関雪がヒントとなる文章を残している。それによれば、関雪の若い頃に、播磨の伊保崎村のある寺で、蕭白作と伝えられる「大きい龍の襖絵」を見たと言うのである。おそらくその襖絵がこの作品だろうと考えられる。

関雪の文章の中には、「春雨雲を駆る勢いで一面に黒気を漲らした間から、二頭の龍がさながら生けるが如く、村人の胆を奪って踊り出さん」とあるから、もう一頭描かれていたわけである。したがって現存するものは、一部だということになる。現存するのは八面だが、もともとは十二面だったのだろう。

これは、龍の頭の部分。この部分は四面ある。この右側の四面に龍の尻尾の部分が描かれている。この両者の間に、もう一頭別の龍と、上の龍の腹の部分が描かれていたものと推測される。

大画面いっぱいに龍の頭が描かれており、その目玉が見るものを恐れさせる。牙や爪の描き方には、写生にこだわらない、奔放な構成力が感じられる。なお、八面全体の画面の右端に、「曽我蕭白行年三十四歳図」とある。

(1763年 紙本墨画 各面165×135cm ボストン美術館)





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