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鷹図:曽我蕭白の世界




曽我蕭白は、多くの鷹図を手がけているが、これはその最高傑作といってよい。しかも数少ない彩色画の傑作である。縦長の構図の中に、上段には鷹を大きく配し、下段に二羽の小禽を配して、華美な色彩で描いている。蕭白の彩色画の特徴は、原色を多用した華やかさにあるが、これはやや落ち着いた色彩配置になっている。その分黒を有効に使うことで、華美な印象をもたらしている。

蕭白といえば、ぞんざいさを感じさせるような描き方が気になるのだが、この絵にはそういうぞんさいさは感じられず、かえって精妙そのものである。特に、二羽の小禽はきめこまかく描かれている。鷹のほうも、羽の描き方など、実に精妙である。

落款に「明太祖皇帝十四世玄孫蛇足軒 曽我左近次郎暉雄 入道蕭白画」とある。また、この絵が収まっている箱には、「明の太祖の息子がシ文皇帝、そのまた息子の秀文が日本に渡来し、その実子が蛇足」とある。蕭白は従来蛇足の十世の子孫と名乗っていたのだが、その蛇足を明の太祖につなげることで、自分が明の太祖の子孫だと強弁しているわけである。蕭白にはこれ以外にも経歴詐称があるが、明の太祖の子孫を僭称するというのは、いかにもほら吹きらしい。

(1764年 紙本着色 136.3×59.0cm 香雪美術館)





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