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蓮鷺図:曽我蕭白の世界




曽我蕭白といえば、ぞんざいさを感じさせる作品が多いという印象が強いが、一方で、繊細な技術を感じさせる作品もある。この「蓮鷺図」などは、そうした繊細な水墨画の代表的なものだ。蕭白はすでに若い頃に「林和靖図屏風」のような高度な水墨画テクニックを駆使した作品を作っていたが、この「蓮鷺図」も比較的若い頃の作品と思われる。

構図は単純そのもので、蓮の葉陰に鷺を配置したにすぎないが、絶妙な空間処理のおかげで、奥深さとまた律動感のようなものも伝わってくる。

鷺は、輪郭線の外側を墨でグラデーションをつけたうえで(外隈という技法)、内側を白く残しながら、要領よく細部を仕上げている。蓮の葉は没骨法を採用してざっくりと仕上げている。このざっくり感と鷺の繊細な描き方との対比が、画面に律動感をもたらしているわけだ。

こうした蕭白の水墨画のテクニックは、同時代の応挙や若冲より優れているといえよう。

(製作年不明 紙本墨画 110.5×47.5cm 個人蔵)





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