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鷲図屏風:曽我蕭白の世界




「鷲図屏風」は、東海道の宿場町水口の寺院に伝わってきた作品。猿を捕らえた鷲と、その様子を見つめるもう一羽の鷲を描いている。すさまじい迫力を感じさせる作品である。

右側の鷲は、渓流のほとりで猿に襲い掛かり、鋭い爪で猿の体をつかんでいる。つかまれた猿は、必死の形相で逃げようとするが、むなしい努力に過ぎない。左側の鷲は、その様子を見つめながら、折あらば余禄にありつこうと思っているのだろう。その表情は、右の鷲に劣らず精悍だ。

墨画ながら、猿の顔だけが赤く塗られている。そのことで猿の苦悩を強調しているつもりなのだろう。「月下狸図」の中の狸も、口の中が赤く塗られ、そのことで独特の存在感をかもし出していた。蕭白には、絵にドラマを感じさせるような工夫を重んじるところがある。

ともあれ、ものすごい躍動感が伝わってくる作品である。

(製作年不明 紙本墨画 六曲一隻 154.8×359.6cm) 





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