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北国五色墨:歌麿の美人画



(切の娘 大判錦絵)

北国は吉原の異称、江戸の北郊にあることからこう呼ばれた。北郭とも言う。五色墨は享保年間に刊行された俳諧集の題名。歌麿はそれに、五色つまり五人の美人たちという意味を重ねた。

切の娘とは、切見世の女と言う意味。切見世は吉原の遊女屋の中でも格が低く、そこにいる女たちは海千山千のものたちであったが、歌麿は彼女らを可憐な女として美化している。

この女などは、読みかけの手紙をかくす様子に見えるが、ひとに覗かれては困るのか、あるいは恥ずかしいとでも言うように、可憐なところを見せている。


(川岸 大判錦絵)

川岸は、吉原内部の五丁町ではなく、おはぐろどぶの外側に張り付いたように展開している地帯であった。ここには、切見世とか鉄砲見世とか呼ばれた格下の遊女屋が並んでいた。

この絵の中の女は、爪楊枝で歯をほじくり、はだけた着物から乳房を覗かせている。そのふてぶてしい表情からは、しぶとい生活力を感じさせる。

歌麿の美人画のなかでは、もっともリアリズムを感じさせる一枚だ。







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