日 本 の 美 術
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何気ない仕草:歌麿の美人画



(木挽町新やしき 小伊勢屋おちゑ)

日本橋木挽町にあった水茶屋の看板娘おちゑを描いたもの。娘が手にとって見ているものは、絵本の類だろうか。きりっとしたまなざしには、知性のようなものが感じられるが、豊満な体つきからは女の色気が強く伝わってくる。

背景には紅雲母を施し、女の華麗な美しさを引き立てている。この頃、背景に雲母をもちいる雲母刷りという技法が大いに流行した。雲母刷りは高価なので、ある程度人気のある作家でないと、適用されなかった。写楽の大首絵も雲母刷りで作られていた。


(虫篭)

虫篭を手にとって、無心に虫の様子を見つめている娘を描いたもの。歌麿は、このような何気ない仕草を描くときに、もっとも生き生きとした感じを表現できた。写真でいえば、スナップショットのようなものだろう。

娘は胸をはだけ、乳房がこぼれているのを気にしない。虫に夢中になるあまり、あたりをはばかることを忘れてしまったようだ。

背景の幾何学的なパターンは、歌麿の創作になるものか。おそらく、こういう場を利用して、造詣の遊び心を楽しんでいたのだと思われる。







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