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針仕事:歌麿の版画




「針仕事」は三連式の版画組絵で、江戸時代の女性の日常生活を描いたものである。画面全体には四人の女がおり、みなで協力しあって針仕事をしているところが描かれている。四人の女とは、母親とその三人の娘たちであろう。母親は、中央の画面にいて、右手の画面の娘とともに、仕立てるべき布の寸法取りをしている。母親の背後には、別の娘が針箱を抱えもって、仕事の準備をしている。

そして第三の娘が、この絵の女性である。娘は、別の布を広げて、寸法取りの次の作業に備えているようである。娘の膝のうえで遊び戯れているのは、娘の子ではなく、幼い弟だと思われる。

弟はもう一人いて、右手の画面で、猫を相手にじゃれ遊んでいる。いずれも、江戸時代における庶民の飾らぬ生活を描き出したものだ。歌麿は、女性の美しさを理想化して、類型的に描く一方、このような庶民の生活を、飾りけなく描くことにも長けていた。

それにしても、この絵の中の女性の表情は実に生き生きとしている。こんな生き生きとした表情の女性を描いたのは、歌麿のほかにはいない。







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