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白鵞遊魚図:渡辺崋山の絵画世界




「白鵞遊魚図」と題するこの絵を、崋山は文政六年(1823)に田原藩主に献上したと思われる。款記に「臣渡辺登謹写」とあるからである。崋山は、文政二年に和田倉門の修築工事監督を仰せつかって、文政六年にその仕事を終えた。この絵は、その崋山をねぎらう藩主の謁見のさいに、献上されたのであろう。

文政六年には、田原藩士和田伝の娘たかをめとっている。時に崋山三十一歳、たか十七歳であった。三十一歳での結婚は、当時は晩婚に属していた。家が貧窮して、嫁を迎える余裕がなかったのだろう。

花鳥図は、崋山若年の頃もっとも得意とした分野。この絵には崋山なりの成熟ぶりがうかがわれる。崋山はこの頃から、西洋画を意識するようになったらしいが、その作品には、まだ西洋画の影響は見られない。

川辺の草花を背景に、水面に浮かぶ白い鵞鳥を描いている。モチーフの一つひとつは丁寧に描かれているが、立体感はない。非常に平面的である。鵞鳥の視線の先には魚が一匹はねているのだが、気をつけて見ないとわからないほど、迫力が足りない。

(文政六年 絹本着色 123×55㎝ 遠山記念館) 





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