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海錯図:渡辺崋山の絵画世界




「海錯図」も天保十一年蟄居中の作。「海錯」とは、生みのめぐみといったほどの意味。蟄居した田原は、愛知県の渥美半島にあり、海が近かったので、「海錯」が豊富だった。崋山は罪人扱いとはいえ、日頃から人々に敬愛されていたので、海の幸を差し入れする人も多かったと思われる。

タイ・サバ・カマスのほか、この付近の海域で釣れる魚が描かれている。崋山は写実に心掛けているようであるが、琳派風の波の描き方など、因習的な日本画の画法を使っているので、やや様式的な印象を与えないでもない。魚たちは、水中を泳いでいるというより、空中を飛んでいるように見える。

款記に、「甲午秋月戯写崋山外史」とある。甲午は天保五年にあたるが、おそらく蟄居中の身をはばかって、時を遡及させたのではないか。

(天保十一年 絹本着色 113.3×55.4㎝ 静嘉堂文庫 重文)





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