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千山万水図:渡辺崋山の絵画世界




「千山万水図」は、最晩年の崋山の心境を絵に託したものだと言われている。描かれているのは三浦半島で、その周辺を行く船は外国船だという解釈にたち、日本の海防の必要性を訴えたのではないかというのである。そう思えないこともないが、あるいは考えすぎかもしれない。

手前には、夥しい数の人間が、蚤のように小さく描かれている。かれらは滝を目ざして歩いているが、これは中国の伝統的な寓意を踏まえたものではないかとの解釈もある。中国では、王朝がかわると、旧時代の君子は山に逃れるという説話があるが、崋山も、徳川政権をはばかって幽谷に逃れる人々に自己を同一視したのではないか、というわけである。

構図としては、雄大さを感じさせる。上空から俯瞰しながら、遠近感が伝わってくるように工夫されている。こうした遠近感の強調は、西洋絵画に触発されたものと思われる。

(天保十二年 絹本着色 147.5×71.8㎝ 田原市美術館 重文)





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