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蟲魚帖:渡辺崋山の絵画世界




「蟲魚帖」は、崋山が田原蟄居中に、身辺の小生物を写生した画帳である。十二図からなり、それぞれに漢詩の墨書が添えられている。これらを崋山は、まず稿本の形で準備作業をしたうえで、正式な画帳にして、門人の椿椿山に贈っている。椿山なら、これらの絵に込めた自分の命をわかってくれるだろうと期待したからだが、しかし、その気持ちを公にしないで欲しいとも断っている。

蟲魚帖と銘打っているとおり、題材は昆虫や魚類である。昆虫の絵が多い。蠅とかコオロギとかカマキリといった、日常身辺で目にする生き物が、実にリアルに描かれている。

上の絵は、第九図「鶏頭蜻蛉図」で、鶏頭の花に向って戯れるトンボを描いたもの。



これは、第十二図「寒塘曝亀図」。他図と同様に漢詩が添付されているほか、図中に墨書が添えられている。「然れどもその霊人の用をなすは亀に如かず。何の忌むことかこれあらん」と記されている。亀は占いに用いるものだから、別に嫌ういわれはないという意味だろう。また、この図柄は、小さな亀が大きな亀を追いつめている様子を描いているが、小さな亀は日本、大きな亀はロシアだと解釈できる。

(天保十二年 絹本着色 各27×24㎝ 岡田美術館 重文)





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