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谷村虎蔵の鷲塚八平次:写楽




鷲塚八平次は、兄の官太夫とともに由留木家の乗っ取りをはかる悪党。悪党としての格のうえでは、奴江戸兵衛との二役を演じた大谷鬼次演じる官兵衛のほうが上だが、写楽はこちらの方を選んで取り上げた。それには、二役をした鬼次を重ねて取り上げることを避けたという事情もあったろうが、この役者に対する写楽の好みのようなものも働いているのではないか、との見方もある。

谷村虎蔵は、寛政四年に大阪から江戸に下ってきた役者で、この舞台に立った時にはまだ二十六歳の若さだった。若さに関わらず、独特の雰囲気を感じさせるように見えるが、この舞台での評判はあまりよくなかったようだ。だが、寛政七年には二代目大谷友右衛門を襲名し、やがて実悪の名人となる。

この絵は、刀の束に手をかけて、相手を威嚇しているところ。大きく見せかけようと見開いたどんぐり眼、小鼻の発達した獅子鼻、への地に結んだ口からはみ出した出っ歯と言う具合に、かなりデフォルメされた表情からは、滑稽さも伝わってくる。







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