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上野清水堂不忍ノ池、上野山した:広重の名所江戸百景



(11景 上野清水堂不忍ノ池)

上野の清水堂は、京都の清水寺にまねて、舞台の上につくられた。そこからは不忍池が見下ろせる。これを琵琶湖に見たてて、その中に竹生島に模した中島と弁天堂を作った。

上野は桜の名所だが、その桜は吉野の桜を模したものだ。上野の山は、全体が寛永寺の境内地であって、普段庶民が立ち入ることはできなかったが、桜の季節だけは許された。庶民は山下の黒門をくぐって山の中に入り桜見物を楽しんだのだったが、寛永寺の規制が厳しく、飲酒管絃はご法度だった。

この絵は、桜に囲まれた清水堂の佇まいを描いたもの。庶民が舞台の上から不忍の池の方向を眺めている。眼下には不忍の池と弁天堂に向かう中島の参道が見えている。


(12景 上野山した)

上野の山には、普通黒門から入った。黒門は山の南側に位置し(京成駅から近い)、そこから東にかけた一帯が上野山下と呼ばれた。これはその一角を描いたものだ。黒門の南側の先は広小路になっていて、日よけ地としての役割を果たしていた。

上野の広小路は、両国広小路と並んで、江戸有数の娯楽場だった。茶店、講釈場、見世物小屋などが集まり、ちょっとした遊興センターだったのである。

この絵は、広小路に面してたっていた伊勢屋という店を描いている。この店はしそめしを食わせたという。大勢の庶民が集まり、二階では客がめしを食う様子が見える。また、店先を行く蛇の目傘の一行は、上野の山に桜見物に向かう人びとだろう。





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