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日暮里諏訪の台、千駄木団子坂花屋敷:広重の名所江戸百景



(15景 日暮里諏訪の台)

谷中から道灌山に伸びる台地の北外れに諏訪神社がある。太田道灌が灌頂したものだ。この神社の名にちなんで、そのあたりを諏訪の台と呼ぶ。東側が崖になっていて、非常に眺めがよい。また、神社の境内には桜が植えられていて、花見を楽しむこともできた。

そんなわけで、このあたりは桜が咲く頃には大勢の人が集まった。この絵は、そんな花見の様子を描いたものだ。崖っぷちに床几を据えて、茶を振る舞っている。客は花を見るかたわら、はるかに拡がる台地の展望を楽しむ。その展望の先には、筑波山が見えた。

この絵には見えないが、諏訪神社の隣には別当の浄光寺があり、そちらは月見の名所として人気があった。


(16景 千駄木団子坂花屋敷)

団子坂は千駄木の台地から藍染側に向ってのびる長い坂。この坂の上からは江戸湾がよく見えるので、もと潮見坂と呼ばれていたが、どういうわけか団子坂と呼ばれるようになった。団子坂は、かつては菊人形の名所として知られ、漱石の小説「三四郎」にもその様子が描かれているが、徳川時代には花屋敷があったものと思われる。

この絵は、藍染川から眺めた団子坂の様子だろう。坂の上にあるのが花屋敷だろうか。坂の中途には四阿が見える。また坂の下には桜が咲き広がっているが、この桜が藍染川のあたりにあったという記録はないようだ。だから、広重には珍しい、作り物の図柄かもしれない。

これを藍染川ではなく、根津神社から見た眺めだという説もあるが、それだと団子坂戸のつながりが弱くなる。ともあれのどかさを感じさせる一点である。





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