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飛鳥山北の展望、王子稲荷の社:広重の名所江戸百景



(17景 飛鳥山北の展望)

飛鳥山はいまの王子駅の南西にあたる台地で、徳川時代には桜の名所として知られていた。いまでも桜は植えられていて、大勢の花見客が集まる。また、北側を音無川が回りこむように流れており、一帯は山あり谷ありの複雑な地形を呈している。そんなところから、徳川時代から人気のある観光スポットだった。

これは飛鳥山から北のほうを展望したもの。眼下に広がるのは田園のはずだが、それを一切省いて単純化し、遠景として筑波山を配している。筑波山は、富士山と共に江戸の視界を区切るものとして、つねに意識されていた。江戸の何処にいても見えるはずだが、飛鳥山からはとくに素晴らしい眺めを呈した。

手前には満開の桜が見え、崖にそって松林が見える。その下に敷物を広げて、人々が思い思いの花見を楽しんでいる。


(18景 王子稲荷の社)

王子稲荷は飛鳥山の北、音無川を挟んだ台地の端にある。関八州に点在する稲荷神社の総元締である。そんなことから、毎年大晦日の夜には、関八州一帯から狐が集まって来て、一年を振り返りながら反省すると言われた。

稲荷はもともと農耕の神だったが、そのうち商売繁盛や厄除けにも効験をあらわすようになり、江戸の町民たちからも深い信仰を集めた。一年中参詣者が絶えなかったが、特に二月の初午の日には、群衆で賑わったという。

この絵は、境内に咲き広がっている梅の花の様子から、その初午の日に参詣する人々を描いていると思われる。遠景に見えるのは丹沢の山並だろう。丹沢は南西にあたるから、山に落ちている光は夕日にちがいない。いまでも神社の本殿は、南西に向いている。小生も参拝したことがある。





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