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高輪うしまち、月の岬:広重の名所江戸百景



(高輪うしまち)

東海道は、泉岳寺のあるあたりで、海に面して、片側だけに町屋がある片側町になっていた。そのあたりを車町、あるいは牛町といった。寛永十一年(1634)に、増上寺の造営にともない、京都から牛持ち人足が呼び寄せられ、建築材料の運搬に従事させられ、そのままこの地への定住を許されたことから車町とか牛町とか呼ばれるようになったのである。

この絵は、その片側町である牛町から、東側の海を眺めた構図。手前に牛車の車輪が大きく描かれ、その陰で子犬が遊んでいる。また遠景に見える島のようなものは、海防用に作られた大砲のお台場である。

画面左上に描かれている湾曲したイメージは、人工の構築物か、自然現象か、この絵からはよくわからない。


(82景 月の岬)

三田の台地からは月がよく見えたので月の岬と呼ばれた。とくに八ツ山の高台が月見の名所として名高かった。広重は、この名所を「絵本江戸土産」のなかでも描いている。

この絵は、その月の岬にある茶屋から江戸湾を眺めた構図。一見するとかなり大きな店がまえだが、実際には、八ツ山の高台には小さな茶屋があるばかりで、このような大きな店はなかったという。だからこの絵は、一部広重の創作になるところということになる。

軒下から満月がのぞいて見える。その光を受けて、障子に女の影が映っているが、かんざしを五本さしていることから、遊女とわかる。座興が一段落して、くつろいでいるところだろう。





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