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鴻の台とね川風景、堀江ねこざね:広重の名所江戸百景



(95景 鴻の台とね川風景)

鴻の台は、江戸川の下流、いまでいえば千葉県の市川市にある高台である。付近に下総の国府があったことから国府台と呼ばれたのが始まりだが、台地の下を流れる川にコウノトリが飛来したことから鴻の台とも呼ばれた、

鴻の台の下を流れる川を利根川と呼んでいるのは、事情がある。利根川はもと中川に流れ込んでいたのを、家康が付け替えて、鬼怒川に合流させて銚子の方面に流れを変えた。しかしその利根川は完全に江戸から分離されたわけではなく、水の一部は関宿から江戸川に導かれた。そんなわけで、江戸川を利根川と呼ぶこともあったようだ。

この絵は、画面左手に鴻の台の切り立った台地をやや誇張して描き、その下にゆったりとした江戸川の流れを描いている。舟が行きかっているが、南下していることから、北日本から来た船だとわかる。銚子から利根川を上り、関宿から江戸川に入って、江戸湾を目指しているのである。


(96景 堀江ねこざね)

堀江も猫実も千葉県浦安市の地名である。徳川時代には行徳領であった。行徳は江戸の塩の需要を担う塩田のあるところだったが、漁業も盛んだった。塩も魚も、江戸湾から堀川と小名木川を通って江戸中心部に運ばれていった。

堀江と猫実は、堺川という小河川の両側に広がっていた。この絵は、その堺川を挟んで、二つの村が広がる様子を描いている。向かって左側が堀江、右側が猫実である。

河口近辺に松林が見るのは、防波堤の上に植えられたもの。ここはたびたび津波に襲われたことから、堅固な堤防を築き、その上に松の木を沢山植えたといわれる。





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