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小奈木川五本まつ、両国花火:広重の名所江戸百景



(97景 小奈木川五本まつ)

小奈木川は小名木川とも書く。行徳の塩を江戸に運ぶことを目的に掘られた運河である。行徳の塩は、江戸川から堀川を経て中川に至り、さらに小名木川を通って隅田川に出たのである。この運河を開削したのは小名木四郎兵衛だったので、彼の姓をとって小名木川と名づけられた。

その小名木川の中ほどの北側の堤に、松の木が五本並び立っていて、五本松と呼ばれた。だが広重がこの絵を描いたころには、五本のうち四本が枯れてしまい、一本だけが残っていた。

この絵は、その一本残った松と、その下を流れる小名木川を描いている。船が描かれているが、これは観光客用の船。市川方面へ向かう観光客を運んだものだ。


(両国花火)

両国の花火はいまでも東京名物になっている。毎年夏の川開きに催されていたもので、享保十八年(1733)から始まった。

花火の費用は、隅田川の船宿と沿岸の茶屋が負担したという。そのほか、金持ちが自前で打ち上げたものもあった。花火の打ち上げを請け負ったのは、浅草の花火師鍵屋弥兵衛と両国の玉屋市兵衛。玉屋が両国橋の上流を、鍵屋が下流を担当した。

この絵は、夜空を彩る花火のはなやかなさまを描いたもの。橋の上や川岸に大勢の見物人が押しかけているほか、船を繰り出して見物するものもいる。いまと変わらぬ風景である。





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