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上総の海路、登戸浦:北斎富嶽三十六景



(上総の海路)

この絵は、上総の海から富士山を望んだところを描いたもの。手前の二艘の船は弁財船といって、大量の荷を迅速に運ぶために作られた船。上総の木更津と江戸前を結んでいたものだ。その船を北斎は実に念入りに描いているが、実際の姿とは違うという指摘もある。帆はもっと大きかったはずだと言い。また、操舵をする船の後部にこんなに多くの荷を積むことはなかったと言うような指摘だ。

海の彼方の水平線は丸く描かれている。この時代にはすでに、地球は丸いということが常識になっていたのだろう。

船に焦点をあてた故か、このシリーズの絵にしてはめずらしく、人の姿が見られない。


(登戸浦)

登戸浦は、現在の千葉市登戸あたりの海岸をいう。今では埋め立てが進んで海岸線は後退してしまったが、徳川時代には浅瀬の浜が広がり、人々が潮干狩りを楽しんでいた。

浅瀬に立っている二つの鳥居は、登戸(登渡)神社の鳥居と思われる。現在の神社は市街地の中にあり、したがって鳥居も内地の地面に立っているが、当時はこのように、海の中に立っていたものらしい。

浅瀬では、潮干狩りをする人、収穫を運ぶ人、遊びまわる子供などが生き生きと描かれている。その浅瀬に食い込むような形で水草が生え、磯がかなりでこぼこしている。このことを根拠に、これは実は千葉の登戸ではなく、川崎の登戸だとする意見もある。

遠くに見える富士は、白抜きで表現されている。







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