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本所立川、従千住花街眺望ノ不二:北斎富嶽三十六景 |
(本所立川) 本所立川は、本所地区の南部を貫く運河。それが隅田川に合流する河口付近は材木の置き場だったようだ。この絵は、その材木置き場から眺めた富士を描いたもの。富士は林立した材木の影から、白く染まった頂を覗かせている。 それにしても、天に向かって伸びあがる材木の列と言い、うずたかく積み重ねられた薪の山と言い、この絵には極端な誇張がある。しかも、鋸を挽く男と言い、上下で薪をやり取りしている男たちと言い、まるで空中を遊泳しているように見える。これは北斎一流の遊びだと思われる。 遊びではないかもしれないが、「西村置場」の表示と言い、「新板三拾六不二仕入」といい、広告のような文言をちゃっかり忍ばせている。 なお、この絵には構図上の不自然さを指摘することができる。視線が斜め上からになっているにかかわらず、中景の建物群の背後が省略されて、空のように見えることだ。斜め上からの視線の先には、空ではなく市街地の続きが見えなくてはいけない。 (従千住花街眺望ノ不二) 千住は奥州街道第一の宿場、そこには色街があった。この絵は、色街の手前を通り過ぎる大名行列と、それを見守るように立っている富士を描いたもの。 大名行列は、鉄砲隊の後に毛槍部隊が続いているが、まともに描かれているのは鉄砲隊のほうだけで、毛槍部隊は、毛槍の先端がちらりとのぞいているだけだ。鉄砲を担いだ兵士たちの目線の先には、塀に囲まれた色街の佇まいがある。兵士たちには、富士より色街のほうが興味深いようである。 田圃の畔に腰を下ろしている二人の女はともかく、右手の藁ぶきの小屋の中で休んでいる男たちが、大名行列を全く無視しているように見えるのは面白い。当時、大名行列に対して庶民がこんな態度をとれば、命が危なかったに違いない。 |
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