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北斎千絵の海(二):総州利根川、宮戸川長縄



(総州利根川)

「総州利根川」は、利根川の河口近くでの漁労のさまを描いたもの。猟師がいましも四つ手網を引き揚げようとする瞬間を捉えた。四つ手あみというのは、日本の竹竿を十文字に結びあわせ、竹の四つの先端に網を結びつけたもの。フナ、コイ、ウナギ、ナマズなどをとるのに用いられた。

利根川はけっこう流れが速いことで知られていた。北斎は、それを並みの様子で表した。海程ではないにしても、流れる水面が風を受けて波しぶきを上げる様子を、丁寧に描いている。


(宮戸川長縄)

今戸川とは、隅田川の浅草付近の流れを指して言った。そのあたりで行われていた長縄の漁を描いたのがこの作品「宮戸川長縄」である。長縄とは延縄ともいい、長い縄にいくつも子縄を結びつけ、それぞれの子縄に針を結んで魚をひっかけるという漁法である。今でも、海での漁で行われている。

この絵には三艘の漁船が描かれている。一番手前の船には四人もの男たちが乗り込み、なにやら作業をしている様子。釣り上げた魚をさばいているようにも見える。延縄漁をするのに、四人もの男は必要としないので、彼らは船で遊んでいる客なのかもしれない。







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