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北斎千絵の海(三):甲州火振、待ち網



(甲州火振)

火振とは、松明の火を振って魚を追い込んでとる漁法。焚き寄せともいう。甲州は、鵜飼と共にこの焚き寄せが盛んだった。両者ともに火を用いて魚をおびき寄せるところが共通している。

この絵では、数人の男が役割を分担しあって魚を取っている。松明を振って魚を追い込む者、その下流に待ち構えていて、やってきた魚を取り上げる者。絵を見ると、男たちは素手で魚を掴んでいるようにも見える。

川は流れの速い渓流なのだろう。画面手前から奥へ向かって早足で流れて行く様子が、波紋で表現されている。バックは真っ黒な宵闇で、夜空には星が輝いている。


(待ち網)

待ち網とは、川の流れの途中に網を仕掛けて置き、網の中に入り込んできた魚を取るもの。置き網とも言われる。普通は、仕掛けて置いた網を、後で回収する方法をとるのだが、この絵を見ると、猟師たちは、流れを下ってきた魚をざるや網ですくい取っているようである。

流れの上流には橋がかかり、その下を水が滝のように流れ落ちている。その滝といい、手前の流れの急な様子といい、こんな場所なら置き網に適しているかもしれない。

なお、この絵は、シリーズの他の絵とは異なり、場所を特定していない。







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