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北斎諸国滝廻り(二):下野黒髪山きりふりの滝、相州大山ろうべんの滝



(下野黒髪山きりふりの滝)

下野黒髪山とは、栃木県の日光にある男体山のこと。その麓の霧降高原に霧降の滝と呼ばれる滝がある。上下二段からなっていて、それぞれが二つ以上に枝分かれしている。上滝は25メートル、下滝は26メートルで、合せた全長は70mを超える。滝からあがるしぶきが、霧となって垂れ込めるところから、霧降の滝と名づけられた。

北斎は、二段の滝の様子を描いたわけだが、実際にこの二つは、こんなにくっついているわけではない。しかしそこは北斎のこと、連続しているように描きなおしたわけだ。水の描き方は、このシリーズの中でもっとも様式的である。

滝壺付近には三人の見物人が滝の上を見上げている。その視線の先には、二人の別の旅人がいて、下の人に呼応しているように見える。


(相州大山ろうべんの滝)

相州大山ろうべんの滝とは、神奈川県大山山中にある滝。8世紀の僧侶良弁が大山を開山したことにちなんで名づけられた。滝自体は大きくはなく、細筋の水がたらたらという感じで流れているだけだが、滝壺はけっこう大きく、ここで大勢の僧が修行をしたという。

この絵の中の滝はかなり規模が大きく描かれている。滝壺の中に入っている人々は、修行中の僧侶ではなく、現世利益を求めてきた俗人たちである。







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