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北斎百物語(二):こはだ小平二、笑ひはんにや、しうねん



(こはだ小平二)

こはだ小平二は「木幡小平次」という怪談物の主人公。小平次は大根役者だったために、もっぱら幽霊の役ばかりやらされていた。その小平次には妻がいて、これが他の男と密通したうえ、共謀して小平次を殺してしまった。殺された小平次は、恨みの余り往生できず、今度は本物の幽霊となって、自分を殺した者の前に現れる、という話である。

この絵は、蚊帳の影から幽霊となった小平次が現れるところを描いている。北斎の描いた幽霊の中では、もっとも幽霊らしいのではないか。


(笑ひはんにゃ)

般若は、能や歌舞伎の常連のキャラクター、怪談物のスーパースターともいえる。般若とは、もともと知恵を意味する仏教用語だが、いつの間にか、盲念にかられた老婆を意味するようになった。

般若が出てくる狂言としては、那須の「殺生石」だとか陸奥の「安達が原」などが有名だ。

北斎のこの般若は、子どもの首を鷲掴みにしている。どの出し物を絵にしたのだろうか。


(しうねん)

「しうねん」とは執念、あるいは妄執のことだろう。位牌や供物に毒蛇が巻きついている。位牌は、北斎自身のものだろう。位牌にある「茂問爺=ももんじゃ」とは、妖怪のこと。北斎は、自分自身を妖怪に見立てて、それを毒蛇に絡ませたわけだが、これが何を意味するのか、はっきりとはわからない。

いづれにしても、不気味な雰囲気が漂っている絵だ。







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