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漁楽図:富岡鉄斎の世界




富岡鉄斎の人物の描き方はユニークである。写実にはこだわらず、人物の表情の特徴を誇張するような描き方で、かなりデフォルメされている。そういうところが、鉄斎の絵がとくに西洋人から高く評価される理由だろう。鉄斎はそうした描き方を、若い頃から親しんだ大津絵などから学んだようだ。

漁楽というのは、猟師の楽しみということか。自作と思われる賛の文章には、その楽しみが次のようにうたわれている。いわく、「樵夫は問うに水を以てし、漁叟は答うるに山を以てす、一問一答山水の間を離れず」。樵夫も漁叟も凡夫をいうのではなく、高潔の士をいう。その高潔の士が世俗を超越して風雅の境地に遊ぶ様子を表現したつもりだろう。

男たちは、釣ったばかりの魚を料理して、歓談しているように見える。右手には船の帆らしいものが見えるが、そうだとすると彼らは船の上で酒盛りをしているのか。

1876年5月、大阪の実業家玉手氏の家に滞在した折に描いて贈った作品。画面下部の部分図である。

(1876年 紙本淡彩 134.2×56.7cm 宝塚市、清荒神清澄寺)





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