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寒霞渓図:富岡鉄斎の世界




「寒霞渓図」は、「富士遠望図」とともに六曲一双の図屏風を構成する。これはその左隻にあたる。寒霞渓とは、小豆島にある神懸山の渓谷のことで、その優美な眺めを賞されて寒霞渓と言われるようになった。鉄斎は、前年の明治三十七年に、息子の謙蔵をともなって小豆島に遊んでおり、その折の印象をもとにこれを製作した。

賛は鉄斎自作の詩。「此れは是れ天然の黄大痴、山皴石皺尽く奇を呈す、久しく画訣を探るも曽て得るなし、今日何ぞ図らん我が師に遇う」。黄大痴は元代の文人画家、鉄斎が師と仰いだ人らしい、その師匠の絵にこの眺めが似ていると言いたいのだろう。

巍巍たる岩山のつらなりが、緑青をもちいて描かれ、その合間に漂う霞が、墨を薄くして微妙に表現されている。左上手に見えるのは、瀬戸内海の水面だろう。

(1905年 紙本着色 155.5×361.0cm 京都国立近代美術館)





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