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会稽清趣図:富岡鉄斎の世界




「会稽清趣図」と呼ばれるこの絵は、書聖王羲之が鵞鳥を愛したという故事に取材した作品。その故事を、「蘭亭序」で名高い会稽山にかけたもの。王羲之が会稽山の麓で、宴会を楽しむかわりに鵞鳥と戯れているというわけである。

その故事とは、次のような内容だ。ある老婆が飼っている鵞鳥を、王羲之は是非譲ってほしいと頼んだ。そこで老婆は、機転をきかせたつもりで、その鵞鳥をつぶして料理した上で王羲之が来るのを待った。王羲之はそれを見て大いに落胆したのだった。

また、ある道士が数羽のよい鵞鳥を飼っていた。王羲之がそれを譲って欲しいと頼むと、老子の「道徳教」を書いてくれたら、全部の鵞鳥を差し上げましょうと答えた。そこで王羲之は「道徳教」を書写し、鵞鳥を譲り受けたのだった。

賛には、このような内容のことが書かれている。一方絵のほうは、会稽山とおぼしき高山の麓に庵を結んだ王羲之が、小児の抱きかかえる鵞鳥に見入っている様子が描かれている。緑青と代赭のコントラストが美しい色彩感をかもし出している。

(1912年 紙本着色 138.0×41.5cm 安来市、足立美術館)





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